日本企業が次の1年で力を入れる施策の1位が、AIツールの導入ではなく「人の教育」になりました。Gartnerが2026年4月に実施し2026年8月17日に公表した調査では、ワークプレース変革の重点施策で「デジタル/AIリテラシー教育の強化」が34.2%で首位に立ち、かつて上位常連だった「テクノロジの積極活用」は9位まで下がりました。AIを入れる段階から、AIを使える人を増やす段階へ、投資の重心が移っています。
調査で何が分かったのか
Gartnerの2026年4月調査で、日本企業がワークプレース変革の重点施策として挙げた項目の上位4つは、いずれも30%台前半に集中しました。1位と4位の差は3.9ポイントしかなく、突出した施策が1つあるというより、関心が「人」側の項目に固まっている状態です。
| 順位 | 重点施策 | 回答率 |
|---|---|---|
| 1位 | デジタル/AIリテラシー教育の強化 | 34.2% |
| 2位 | 従業員のモチベーション向上 | 31.8% |
| 3位 | AIと共生する働き方や仕事の再設計 | 31.3% |
| 4位 | 働き方の可視化と組織改善 | 30.3% |
上位4項目のうち3つが、人の能力・意欲・働き方に関する項目です。ツールやインフラを指す項目は上位に入っていません。調査時点は2026年4月、公表は2026年8月17日です。
「テクノロジの積極活用」が9位に落ちた意味
「テクノロジの積極活用」は2025年4月調査で2位(30.6%)でしたが、2026年調査では9位まで後退しました。これはAI投資が縮んだという話ではなく、ボトルネックが移動したと読むのが妥当です。
生成AIの導入自体は、すでに多くの企業で一巡しました。契約を結びアカウントを配るところまでは進んだものの、実際に業務が変わったかというと手応えが薄い。そうなると次の投資先は、ツールそのものではなく「使える人をどれだけ増やせるか」に移ります。重点施策の順位変動は、この移動を反映したものと考えられます。
同時に3位へ入った「AIと共生する働き方や仕事の再設計」(31.3%)も同じ方向を向いています。教育と業務設計はセットであり、仕事の手順を変えずに研修だけ足しても定着しにくい、という認識が広がっていることがうかがえます。

AI研修が定着しない3つの理由
同じ調査では、従業員向けデジタルスキル教育を進める上での課題も聞いています。最も多かったのは時間の問題ですが、経営判断として重いのは2位と3位です。
| 順位 | 教育推進上の課題 | 回答率 |
|---|---|---|
| 1位 | 業務多忙で学習時間が取れない | 37.6% |
| 2位 | 学習内容が実業務と結びついていない | 25.7% |
| 3位 | 教育の方法が適切でない | 23.1% |
1位の「時間が取れない」は、裏を返せば「研修に時間を割く価値が現場に伝わっていない」状態です。自分の業務が明日から楽になると分かっていれば、多忙でも時間は捻出されます。つまり1位の課題は、2位の「実業務と結びついていない」から派生している面があります。
2位が生まれる原因は、教材の作り方にあります。汎用的な生成AI講座は、プロンプトの型やハルシネーション(もっともらしい誤情報)の注意点までは教えますが、「自社の見積書をどう作るか」「自社の問い合わせ対応にどう使うか」までは踏み込みません。受講者は理解はできても、翌日の業務で使う場面を思いつけないまま終わります。
経営・DX担当者への示唆
AIリテラシー教育を成果につなげるには、研修の量を増やすより、業務への接続点を作るほうが効きます。実務では次の3点から着手できます。
第一に、教材の題材を自社の実物にすること。 汎用サンプルではなく、自社の議事録・見積書・問い合わせメールを題材にします。受講者がその場で自分の仕事を処理でき、研修時間がそのまま業務時間になります。2位の課題「実業務と結びついていない」への直接の対策です。
第二に、対象者を業務単位で切ること。 全社員一律の集合研修は、平均的な内容にならざるを得ません。「請求業務を担当する経理3名」のように業務単位で区切ると、教える内容を具体的に絞れます。役割ごとにツールの配り方を変える考え方は、生成AIの利用プランを役割別に設計する方法でも扱いました。
第三に、研修の効果を利用率と時間で測ること。 受講者数や満足度アンケートでは、業務が変わったかどうかは分かりません。研修後30日のツール利用率、対象業務にかかる時間の変化を見ます。効果測定を後回しにすると投資の継続判断ができなくなる点は、AI投資の効果が見えなくなる典型パターンで整理しています。
なお、教育と同時に利用ルールの整備も必要です。教える前に使い方の線引きが無いと、現場が個別に判断してAIを使い始めます。AI利用ルールの整備と業務量の関係、および管理職のシャドーAI利用の実態も併せて検討材料になります。

具体的な活用シーン
業務単位で教育を設計すると、扱う題材は業種ごとに変わります。
- 製造業(品質保証):不具合報告書の要約と過去事例の検索を題材にします。既存の報告書を教材に使うため、研修中に実際の検索テンプレートが1つ完成します。
- 営業部門:商談メモから提案書の骨子を起こす作業を題材にします。自社の提案書フォーマットを読み込ませる手順まで含めると、受講直後から使えます。
- 管理部門(総務・経理):社内規程への問い合わせ対応を題材にします。回答の根拠となる規程の条番号を必ず示させる、といった自社ルールも同時に教えられます。
いずれも共通するのは、研修の成果物が業務でそのまま使える形で残ることです。教材が汎用サンプルだと、この持ち帰りが発生しません。
よくある質問
- AIリテラシー教育では具体的に何を教えればよいですか。
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ツールの操作方法だけでなく、自社データを入力してよい範囲、出力を人が確認する手順、業務での具体的な使いどころの3点が要ります。自社の実物を題材にすると、この3点をまとめて教えられます。
- Gartner調査で「テクノロジの積極活用」が9位に下がったのは、AI投資が減ったということですか。
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投資の縮小ではなく、対象の移動と読むのが妥当です。ツール導入が一巡し、成果を左右する要因が人の能力と業務設計へ移ったため、重点施策の順位が入れ替わったと考えられます。
- AI研修の効果はどう測ればよいですか。
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受講者数や満足度ではなく、研修後30日のツール利用率と、対象業務にかかる時間の変化で測ります。研修前にどの業務を対象にするか決めておくと、比較する数値が用意できます。
まとめ
Gartnerの2026年4月調査では、日本企業のワークプレース重点施策の1位が「デジタル/AIリテラシー教育の強化」(34.2%)となり、「テクノロジの積極活用」は9位へ下がりました。教育を阻む課題の2位に「学習内容が実業務と結びついていない」(25.7%)が挙がっている点が、この結果の実務的な意味を示しています。
次に取るべきアクションは、研修計画を作る前に、対象業務を1つ決めることです。その業務の実物を教材にし、研修後30日の利用率と所要時間で効果を測る。この順序であれば、教育投資が業務の変化として現れます。
自社の業務に合わせたAI研修の設計や、対象業務の切り出しを検討したい方は、AI導入相談フォームからご相談ください。
出典・参考資料
- ZDNET Japan: 企業の重点施策、技術活用からAIリテラシー教育にシフト–ガートナー調べ () (Gartnerジャパンの2026-08-17発表を報じたもの)
- IBTimes JP: Gartner survey puts AI literacy first for Japan companies ()
- Gartnerジャパン: プレスリリース一覧 (本調査の個別プレスリリースURLは特定できず)



