中小企業庁は2026年9月2日、デジタル化・AI導入補助金2026の3次締切について、申請5,913者のうち2,601者を採択したと公表しました。採択率にすると43.99%です。2次締切の51.52%から7.5ポイント下がった計算になりますが、この数字をそのまま自社の見通しに使うのは危険です。枠別に分解すると、通常枠の採択率は1次から3次までほぼ動いていません。全体の数字を動かしているのは別の枠です。本記事では公表数値を枠別に整理し、2026年8月28日に改訂された公募要領の変更点まで踏み込みます。
3次締切の採択結果を枠別に見る
デジタル化・AI導入補助金2026の3次締切は、申請5,913者に対し採択2,601者。枠別では通常枠1,913者中807者、インボイス枠(インボイス対応類型)3,982者中1,781者、セキュリティ対策推進枠18者中13者でした。
以下は中小企業庁が公表した採択結果(1次・2次・3次)の申請数と採択数から算出した採択率です。中小企業庁は採択率そのものを公表していません。以下はすべて公表された申請数・採択数からの算出値です。
| 枠 | 1次締切(2026年6月18日公表) | 2次締切(2026年7月23日公表) | 3次締切(2026年9月2日公表) |
|---|---|---|---|
| 全体 | 2,982/6,440=46.30% | 2,936/5,699=51.52% | 2,601/5,913=43.99% |
| 通常枠 | 891/2,028=43.93% | 819/1,879=43.59% | 807/1,913=42.19% |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | 2,027/4,324=46.88% | 2,096/3,790=55.30% | 1,781/3,982=44.73% |
| セキュリティ対策推進枠 | 64/88=72.73% | 20/28=71.43% | 13/18=72.22% |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | ― | 1/2=50.00% | ― |

3次締切の公募期間は令和8年7月21日まででした。なお、いずれの回も枠別内訳の合計が申請数・採択数の総数と一致しており、インボイス枠(電子取引類型)の数字は内訳に現れていません。
「採択率が下がった」を自社に当てはめる前に
全体の採択率の変動は、申請の約3分の2を占めるインボイス枠(インボイス対応類型)の動きで説明できます。通常枠は3回ともほぼ同じ水準です。
確認すべき点は4つあります。
1. 通常枠は動いていない。 通常枠の採択率は43.93%(1次)→43.59%(2次)→42.19%(3次)。1次と3次の差は1.75ポイントです。各回の母数が約1,900者であることを踏まえると、この差の標準誤差は1.58ポイント(z値1.11)で、偶然の範囲に収まる大きさです。「通常枠の審査が厳しくなった」と読むには根拠が足りません。
2. 全体を動かしているのはインボイス枠。 インボイス枠(インボイス対応類型)は3次締切で申請3,982者と、全申請5,913者の約67%を占めます。この枠の採択率は46.88%→55.30%→44.73%と大きく振れており、全体の採択率はこの動きにほぼ引きずられます。自社が通常枠で申請するなら、全体の数字を見ても意味がありません。
3. セキュリティ対策推進枠は率で語れない母数。 セキュリティ対策推進枠は3次締切で申請18者・採択13者。採択率72.22%と書けますが、1者採否が変われば5ポイント以上動きます。申請数も88者(1次)→28者(2次)→18者(3次)と減っており、この枠の採択率を「通りやすい枠」の根拠にはできません。
4. 変動の理由は公表されていない。 中小企業庁も事務局も、採択率が枠ごとに動いた理由を説明していません。公募要領には「採択・不採択に関わらず審査内容については開示しない」と明記されています。審査基準の変更なのか、申請内容の傾向が変わったのか、予算配分なのかは、公開情報からは判断できません。
補助金の制度そのもの(補助上限額・補助率・対象枠)は、当ブログのデジタル化・AI導入補助金2026の上限450万円と締切・対象枠で整理しています。
2026年8月28日の公募要領改訂で変わった3点
デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠公募要領は2026年8月28日に改訂されました。審査事項の追加、加点項目の追加、不採択理由の扱いの3点が変わっています。
1. 審査事項に「セキュリティ対策を進めているか」が追加された。 通常枠の「事業面からの審査項目」に、この一文が加わりました。通常枠の主な審査項目は「事業面からの審査項目」「計画目標値の審査(労働生産性の向上率)」「政策面からの審査項目」の3系統ですが、その事業面側にセキュリティの観点が明示されたことになります。
2. 加点項目に中小機構「IT経営サポートセンター」が追加された。 従来は中小機構のポータルサイト「デジwith」の「IT戦略ナビwith」を利用していることが加点対象でしたが、改訂後は「IT経営サポートセンター」の利用も加点対象になりました(双方を利用した場合は、いずれか一方に対して加点)。ただし条件が細かく、実務上は日程管理が要ります。
- 第6回公募回より加点措置を実施
- 2026年8月1日以降に利用申込を行うこと
- 交付申請日以前かつ各公募回における交付申請締切日の前月末日までの利用が確認できた場合に加点対象
「締切日の前月末日まで」という条件があるため、締切直前に思い立っても間に合いません。第6回公募回の交付申請締切日は2026年9月7日時点で公表されていないため、逆算できる日付も確定していません。加点を狙うなら、締切日の公表を待たずに早めに利用しておくのが安全です。
3. 不採択理由の記載が変わった。 改訂前は「採択・不採択に関わらず審査内容・不採択理由については開示しない」でしたが、改訂後は「採択・不採択に関わらず審査内容については開示しない」「不採択理由については、事務局から通知する事項以外は開示しない」の2文に分かれました。文面上、事務局から通知される不採択理由が存在することになります。不採択だった事業者は、通知内容を確認したうえで次回に臨めます。

次の締切までにできる準備
2026年9月7日時点で公表されている最新の締切は、通常枠・インボイス枠(両類型)・セキュリティ対策推進枠の5次締切2026年9月29日(火)17:00です。交付決定日は2026年11月9日(月)(予定)とされています。
事務局が公表する事業スケジュールによれば、複数者連携デジタル化・AI導入枠の3次締切は2026年10月30日(金)17:00、交付決定日は2026年12月10日(木)(予定)です。
この日程を踏まえ、準備は次の順で進めます。
| 優先度 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 高 | 自社が申請する枠を確定し、その枠の採択率推移だけを見る | 全体の採択率は申請の約3分の2を占めるインボイス枠に引きずられるため |
| 高 | 加点要件を締切から逆算して前倒しで着手する | IT経営サポートセンターの加点は「締切日の前月末日まで」の利用が条件のため |
| 中 | 申請書を「事業面・計画目標値・政策面」の3系統で自己点検する | 公募要領が示す審査項目の構成に沿っているかを確認するため |
| 中 | セキュリティ対策の記載を見直す | 2026年8月28日改訂で事業面の審査事項に追加されたため |
| 中 | 不採択だった場合は通知内容を確認して再申請を検討する | 公募要領上、不採択なら次回以降の締切までに再度交付申請が可能なため |
補助金は「通れば得」ではなく、通ったあとに事業を実施し、実績報告と効果報告まで完走して初めて手元に残ります。公募要領には、加点を受けたのに加点要件を達成できなかった場合、未達が報告されてから18か月間、中小企業庁が所管する他の補助金への申請で大幅に減点されるという規定もあります。加点は取れるものを全部取る対象ではなく、達成できる見込みのあるものを選ぶ対象です。
まとめ(Auto-IDフロンティアの視点)
- デジタル化・AI導入補助金2026の3次締切は申請5,913者・採択2,601者、採択率43.99%(公表数値からの算出)
- 通常枠の採択率は43.93%→43.59%→42.19%とほぼ横ばいで、1次と3次の1.75ポイント差は母数約1,900者では偶然の範囲
- 全体の採択率を動かしているのは、申請の約67%を占めるインボイス枠(インボイス対応類型)
- セキュリティ対策推進枠は3次で母数18者。率だけで「通りやすい」と判断できない
- 2026年8月28日の公募要領改訂で、事業面の審査事項に「セキュリティ対策を進めているか」が追加され、加点項目に中小機構「IT経営サポートセンター」(第6回公募回より)が加わった
補助金の採択率は「相場観」として消費されがちですが、実際に意思決定に使えるのは自社が申請する枠の推移だけです。全体の数字が下がったからといって申請を見送る、あるいは上がったから通ると考える。どちらも判断を誤ります。
次に取るべきアクションは2つです。第一に、自社が申請する枠を確定し、その枠の採択率推移と公募要領を読むこと。第二に、加点要件を締切日から逆算し、間に合うものだけを選んで着手することです。
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よくある質問
- デジタル化・AI導入補助金2026の3次締切の採択率は何%ですか。
-
中小企業庁の公表値は申請5,913者・採択2,601者で、算出すると43.99%です。枠別では通常枠42.19%、インボイス枠(インボイス対応類型)44.73%、セキュリティ対策推進枠72.22%となります。
- 3次締切で採択率が下がったのは、審査が厳しくなったからですか。
-
理由は公表されていません。通常枠の採択率は1次43.93%・3次42.19%とほぼ横ばいで、全体の変動は申請の約67%を占めるインボイス枠の動きによるものです。審査基準の変更の有無は公開情報から判断できません。
- 不採択になった場合、同じ年度に再度申請できますか。
-
デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠の公募要領では、各締切回で不採択となった場合、次回以降の締切までに交付申請が可能とされています。申請は1法人・1個人事業主あたり同時に1件までです。
出典・参考資料
- 中小企業庁: 『デジタル化・AI導入補助金2026』『通常枠:3次締切』、『セキュリティ対策推進枠:3次締切』、『インボイス枠(インボイス対応類型):3次締切』、の補助事業者を採択しました ()
- 中小企業庁: 同上(2次締切・複数者連携デジタル化・AI導入枠:1次締切) ()
- 中小企業庁: 同上(1次締切) ()
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局: デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠) (審査項目・加点項目・改訂履歴の根拠)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局: デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール (5次締切2026年9月29日の根拠)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局: デジタル化・AI導入補助金2026 資料ダウンロード



