マーケ責任者111名調査|生成AIで時間半減、次の壁はROI

大企業マーケ責任者111名調査で、生成AIによる作業時間削減が50%以上と答えた人は53.4%。一方85.6%が経営陣へのROI説明にプレッシャーを感じています。効率化の次に来る3つの宿題を整理します。

生成AIによる時間削減とROI証明のギャップを示す図

株式会社IDEATECHが2026年8月11日に公表した大企業マーケティング責任者111名への調査で、生成AIを導入した業務の作業時間を50%以上削減できたと答えた人は53.4%に達しました。一方、経営陣から生成AI投資のROI説明を求められることにプレッシャーを感じている人は85.6%。時間は確かに浮いたのに、その価値を経営に説明しきれていない構図が浮かびます。本記事では、この調査の数字を設問をまたいで読み解き、効率化の「次」に着手すべき3点を整理します。

調査の概要と主要な数字

この調査は、株式会社IDEATECHが自社サービス「リサピー®」の企画として実施した自主調査です。数字を読む前に、条件を確認しておきます。

項目内容
調査名大企業マーケティング担当者の生成AI活用と成果に関する実態調査 2026
調査主体株式会社IDEATECH
調査方法インターネット調査(リサピー®)
調査期間2026年7月2日〜7月3日
有効回答111名(年商1,000億円もしくは従業員1,000名以上の大企業でマーケティングに責任者として携わる責任者・管理職)
公表日2026年8月11日

主要な回答結果は次の通りです(IDEATECHのプレスリリースより)。

設問結果
生成AIは「実務の作業量や時間を減らす救世主」(複数回答・n=111)62.2%
生成AIは「自らの専門性やキャリアを脅かす脅威」(複数回答・n=111)29.7%
生成AI導入業務で作業時間を50%以上削減(n=105)53.4%
最終成果(リード獲得数・CV数)の増加に結びついている(n=111)82.0%
経営陣からのROI要求にプレッシャーを感じる(n=111)85.6%
作業ベースの業務を内製化し外注費を削減した(n=111)39.6%
ジュニア層の採用を縮小・見直す(n=111)25.2%

作業時間は本当に半減したのか

「53.4%が作業時間を50%以上削減」という数字は、生成AIへの移行が実際に進んだ業務に限った回答です。母数は111名全体ではなく、移行が進んでいると答えた105名(n=105)である点を押さえておく必要があります。

削減率の内訳は次の通りです。

削減率回答比率
90%以上削減6.7%
70〜90%未満削減18.1%
50〜70%未満削減28.6%
30〜50%未満削減20.0%
10〜30%未満削減24.8%
10%未満(ほとんど変わらない)1.0%
逆に増えた0.0%

注目したいのは、「逆に増えた」が0.0%である点です。少なくともこの111名の範囲では、生成AIを入れて作業時間が悪化した例は報告されていません。移行が進んでいる業務は「週次・月次のデータ集計やレポート作成」62.2%、「SEO記事・ホワイトペーパー等のテキスト生成」61.3%で、いずれも成果物の型が決まっている定型業務です。型が定まった業務から入れば削減効果が出やすい、という順序の妥当性を裏付ける結果と読めます。

「実感」と「証明」のギャップが最大の論点

この調査で最も示唆的なのは、82.0%が成果増を実感しているのに、85.6%がROI説明にプレッシャーを感じているという組み合わせです。実感と証明は別物だ、という現実がそのまま数字に出ています。

内訳を見ると、成果への寄与は「十分に結びついている」27.0%、「ある程度は結びついている」55.0%。一方で「量は増えたが成果(CV・リード数)は変わらない」も10.8%あります。つまり大半が手応えを持ちつつ、その手応えを経営指標の言葉に翻訳できていない状態です。

Auto-IDフロンティアの見方では、このギャップは測定設計の問題です。生成AIを入れる前の作業時間・単価・成果物点数を記録していなければ、後から差分を示すことはできません。導入前のベースライン取得は、導入後には二度と取れない情報です。AI投資の効果測定でつまずく典型的なパターンは、AI投資の55%が「効果不明」|ROIが見えない3つの落とし穴と対策でも整理しています。

実感82.0%と証明のプレッシャー85.6%のギャップを示す対比図

浮いた時間の使い道が、次の成果を決める

削減した時間や予算をどこに振り向けるか、という設問(n=103・複数回答/上位3つまで)では、「デジタル広告・Webコンテンツのさらなる量産」が60.2%で最多でした。以下、「ファンコミュニティ構築やリアル体験の価値向上」49.5%、「ブランド思想(ナラティブ)の再構築・設計」46.6%、「新しいAIツールのリサーチや社内導入の拡大」39.8%と続きます。

ここに経営判断のポイントがあります。量産の再投資は、効果が読みやすい代わりに、競合も同じ手を打てるという性質を持ちます。生成AIによる制作コストの低下は業界全体に起きるため、量を増やす競争は早晩コモディティ化します。一方、49.5%と46.6%が挙げたコミュニティ構築やブランド再構築は、AIで代替しにくい領域です。

削減した時間の使い道を決めずに導入すると、浮いた時間は「もっと作る」に自動的に吸収されます。導入の意思決定と同時に、削減分の再配分先を決めておくことをおすすめします。

3割が感じる「脅威」の正体は、育成の空洞化

生成AIを「自らの専門性やキャリアを脅かす脅威」と答えた人は29.7%でした。その理由を尋ねた設問(n=33)では、「定型作業を担う若手・外注先の存在意義が揺らぐから」が75.8%で最多。次いで「70点程度の成果物ならAIが即座に作成できるから」66.7%です。

この回答は、採用計画の設問と重なります。「定型業務中心のジュニア層の採用を縮小・見直す」と答えた責任者は25.2%、「AIを使いこなせる技術層の採用を拡大する」は47.7%でした。定型作業がAIに移り、その定型作業を担っていた若手のポジションが縮む——という連鎖です。

ここで見落とされやすいのが、定型作業は「若手が仕事を覚える場」でもあったという点です。レポート作成やテキスト制作を通じて業務の型を身につける経路がAIに置き換わると、5年後に「顧客インサイトを掴む力」(この調査で29.7%が必要と回答)を持つ人材をどう育てるのか、という問いが残ります。技術層を採用で調達する方針は短期的には合理的ですが、育成の空洞化は採用では埋まりません。AI時代の育成をどう設計するかは、Cognizantが3万人をAI育成|実装勝負を分ける「業務側の担い手」も参考になります。

定型作業がAIへ移ることで若手の学習機会が失われる連鎖の図

なお、この設問の母数はn=33と小さく、傾向を示す参考値として扱うべき数字です。111名全体のうち33名の回答である点は、社内で共有する際に添えておくことをおすすめします。

経営・DX担当者が今から着手できること

調査結果を踏まえ、順序立てて着手できる3ステップを整理します。

ステップやること期限の目安
1. ベースラインを取る生成AIを入れる前の作業時間・外注費・成果物点数を業務単位で記録する導入検討と同時(着手後では取れない)
2. 再配分先を先に決める削減できた時間を「量産」「ブランド」「顧客接点」のどこへ振り向けるかを導入前に決議する導入決定時
3. 育成経路を再設計するAIに移した定型業務が担っていた学習機会を、どの経験で代替するかを決める導入後3〜6か月以内

特に第1ステップは時間の制約があります。導入が進んでからでは、比較対象となる「AIを使わなかった場合の作業時間」を再現できません。

よくある質問

この調査の数字はどこまで信頼できますか。

株式会社IDEATECHが2026年7月2日〜3日に実施した有効回答111名のインターネット自主調査です。大企業マーケ責任者に限定した傾向値であり、業種横断の全体像を示す統計ではない点に留意が必要です。

生成AIはどの業務から導入すると効果が出やすいですか。

この調査では移行が進んだ業務の上位が「週次・月次のデータ集計やレポート作成」62.2%、「SEO記事等のテキスト生成」61.3%でした。成果物の型が決まっている定型業務から始めると削減効果が出やすい傾向です。

生成AI投資のROIはどう測ればよいですか。

導入前に作業時間・外注費・成果物点数をベースラインとして記録し、導入後の同一業務と比較する方法が基本です。導入後に着手すると比較対象が失われるため、検討段階での記録が要になります。

まとめ

IDEATECHの調査(2026年8月11日公表・n=111)が映し出したのは、大企業のマーケティング現場で作業時間の削減という第1段階が一巡し、次の課題に移りつつある状況です。53.4%が作業時間を50%以上削減し、「逆に増えた」は0.0%。効率化そのものは成果を出しています。

残っているのは3つの宿題です。第一に、82.0%の実感を経営に示すための測定設計。第二に、60.2%が「さらなる量産」と答えた再投資先を、意図的に選び直すこと。第三に、25.2%がジュニア採用の縮小を検討するなかで、育成経路をどう組み直すか。いずれも生成AIツールの選定ではなく、組織側の設計の問題です。

まず着手すべきは、AIを入れる予定の業務について、今の作業時間と外注費を記録することです。この1点だけは、導入前にしかできません。

自社のマーケティング業務でどこから生成AIを入れ、効果をどう測るかを整理したい方は、AI導入相談フォームからお気軽にご相談ください。業務の棚卸しと測定設計からご一緒します。

出典・参考資料

CONTACT

記事を読んで、自社ではどうか気になったら

一般論ではなく、御社の業務に当てはめて一緒に考えます。
まずは無料相談からどうぞ。

無料で相談する 1分でAI活用度診断 →
無料相談する 1分でAI診断