AI推進担当者が社内で孤立している――そう感じている経営層は少なくありません。2026年8月25日、AIポータルメディアを運営する株式会社アイスマイリーが、この「AI推進の孤立化」を掲げた有料コミュニティを開始しました。ただし公的な調査を見ると、企業が挙げる生成AI推進の課題のうち「支援先や相談相手を確保できない」は11.5%で、14項目の下位にとどまります。社外に相談相手を求める前に、自社の詰まりがどこにあるのかを切り分ける必要があります。
アイスマイリーがAI推進担当者向けコミュニティを月5,500円で開始
株式会社アイスマイリーは2026年8月25日、生成AIの実践コミュニティ「AIsmiley Community」を開始しました。月額会費は5,500円(税込)で、初月無料のお試しキャンペーンが設けられています。
アイスマイリーが公式ニュースで説明する設立背景は、「社内に相談相手がいないまま推進を任される担当者が孤独に悩む」という“AI推進の孤立化”です。同社に寄せられた声として「プロンプトの工夫の仕方が分からない」「社外にAIについて気軽に語り合える仲間がいない」の2点が挙げられています。
提供内容は次のとおりです(2026年8月25日発表時点)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 月額会費 | 5,500円(税込)/初月無料キャンペーンあり |
| ライブイベント | 双方向セッションを月10回以上 |
| アーカイブ | 過去セッション録画・限定ウェビナーが見放題 |
| Q&A | コミュニティ上でリーダーや会員に質問可能 |
| カバー領域 | ChatGPT/Gemini/Copilot/Claude/AI×ビジネス(ルール・ガイドライン策定など)の5領域 |
| 想定会員 | DX推進担当者、AI推進リーダー、経営層・決裁者、非エンジニアのビジネスパーソン |
対象を非エンジニアのビジネスパーソンに置き、特定のAIツール1つではなく主要4サービスを横断する設計になっている点が、開発者向けコミュニティとの違いです。
公的調査では「相談相手の不在」は課題の下位にとどまる
商工中金の調査では、生成AI導入・推進の課題14項目のうち「支援先や相談相手を確保できない」は11.5%で下位です。最多は「具体的な活用場面が不明」の35.6%でした。
商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」は、調査時点2026年1月1日現在(調査期間2025年12月19日〜2026年1月16日)、有効回答3,892社のWebアンケートです。上位の項目は次のようになっています。
| 生成AI導入・推進における課題 | 回答率 |
|---|---|
| 具体的な活用場面が不明 | 35.6% |
| 導入を推進する人材がいない | 32.0% |
| 従業員の知識不足、心理的抵抗 | 29.2% |
| 社内ルールや方針整備が追い付かない | 25.1% |
| 導入効果が測定できず、成果が見えにくい | 21.3% |
| 情報管理やセキュリティの不安が大きい | 21.0% |
| 導入予算や時間を確保できない | 19.4% |
| 支援先や相談相手を確保できない | 11.5% |
同じ傾向は、別の公的調査でも確認できます。中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)」(調査期間2025年11月17日〜12月12日、全国の中小企業1万社へのWebアンケート)は、AI導入を推進するために必要な公的支援を5項目で聞いています。必要と答えた割合は、導入費用などの助成77.9%、導入事例などの情報提供70.5%、従業員向けの教育・研修67.7%、試行導入などの機会61.3%と続き、専門家の派遣や導入相談は59.8%で最下位でした。
商工中金と中小機構は調査主体も対象も設問も異なりますが、「人に相談すること」への需要が他の項目より低いという点では同じ方向を向いています。「相談相手がいない」は確かに存在する課題ですが、企業が最も切実に感じている課題ではない、というのが現時点のデータです。

それでも孤立が問題に見えるのは、事例の不足が担当者に集まるから
孤立が実感として語られるのは、上位課題である「使いどころが分からない」「推進する人がいない」の負荷が、担当者ひとりに集中して表れるためです。
中小機構の同じ調査で、「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」に当てはまらないと答えた企業は83.3%、「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」に当てはまらないと答えた企業は79.8%でした。一方で「社内においてIT・AIの必要性への理解がある」は45.1%あります。
つまり、必要性は社内で共有されているのに、何にどう使えばよいかの具体例だけが手元にない、という状態です。この状態で推進を任された担当者は、社内から「AIで何かできないか」と問われ続けながら、答えを自力で探すことになります。孤独感の正体は人間関係の問題ではなく、判断材料の欠乏を一人で埋めさせられている構造です。
帝国データバンクが2026年3月17日〜3月31日に実施した生成AIに関する企業の動向調査(対象2万3,349社、有効回答1万312社)でも、活用の課題・懸念は情報の正確性50.4%に次いで「専門人材・ノウハウ不足」が41.3%で2位に挙がっています。担当者個人の資質ではなく、ノウハウの供給側の問題として現れています。
社外コミュニティで埋まる穴・埋まらない穴
社外コミュニティが埋めるのは「ユースケースと最新情報の供給」であり、埋まらないのは「推進の工数と社内の意思決定」です。この2つを混同すると、会費を払っても状況は変わりません。
| 症状 | 社外コミュニティで埋まるか | 先に必要なこと |
|---|---|---|
| 何に使えるか分からない | 埋まりやすい | 他社のユースケースに触れる量を増やす |
| 主要AIツールの違いが分からない | 埋まりやすい | 横断的に触れる場を持つ |
| 最新情報を追う時間がない | 部分的に埋まる | 情報の取捨選択を他者に任せる |
| 推進に割ける時間がない | 埋まらない | 職務としての工数配分を経営が決める |
| 社内でルール・方針が決まらない | 埋まらない | 決裁者の関与と決定の場を作る |
| 効果を説明できず予算が続かない | 埋まらない | 導入前に測定指標を合意しておく |

月額5,500円は年間で6万6,000円です。担当者1名の人件費と比べれば小さい額ですが、判断すべきは金額ではなく、自社の症状が上段(埋まる)にあるか下段(埋まらない)にあるかです。下段の症状を抱えたまま社外に出ても、比較対象が増えて焦りが強まるだけで終わることがあります。
AI導入の成否を分ける要因は、ツールの選定よりも目的と定着の設計にあります。自社の課題が下段に寄っている場合は、AI導入は26.8%どまり|成否を分けるのは目的と定着もあわせてご覧ください。
孤立を減らすために、社内で先に決める3つのこと
社外に相談相手を求める前に、経営側が決められることが3つあります。いずれも担当者本人には決められず、決裁者が関与しないと動かない項目です。
1. ユースケースの棚卸しを「担当者の宿題」にしない
商工中金調査で最多だった「具体的な活用場面が不明」(35.6%)は、担当者が調べれば解ける問題ではありません。どの業務のどの工程が候補かは、その業務を持つ部門しか知らないためです。部門ごとに「時間を食っている作業」を出させ、担当者はその整理役に回す形にします。他社事例をそのまま持ち込む前に、AI導入成功事例の読み方|自社に効くか見抜く5項目の観点で自社に適用できるかを確認してください。
2. 推進の工数を職務として明文化する
「導入を推進する人材がいない」(32.0%)の実態は、人が存在しないことより、既存業務を抱えたまま兼務で任されていることが多くを占めます。週何時間をAI推進に充てるかを職務記述に書き、その分の既存業務を外す決定は経営側の仕事です。
3. 効果の測り方を、導入前に合意しておく
「導入効果が測定できず、成果が見えにくい」(21.3%)は、導入後に測ろうとすると必ず起きます。対象業務の現状の所要時間・件数・エラー率を導入前に記録し、何が何%変われば継続かを先に決めておきます。この合意がないと、担当者は成果を説明できないまま予算交渉に立たされます。
外部の専門家を使う判断そのものが誤りというわけではありません。ただし発注する場合も、上記3点を自社で決めてから相談したほうが精度が上がります。選定の観点はAI導入支援会社の選び方|発注前に確認する7つの基準に整理しています。
よくある質問
- AI推進担当者はなぜ社内で孤立しやすいのですか。
-
商工中金の2026年1月調査では、課題の最多が「具体的な活用場面が不明」35.6%でした。判断材料が社内にない状態で推進役を任されるため、答えを一人で探すことになり孤立感が生じます。
- AI推進の有料コミュニティは費用対効果がありますか。
-
自社の詰まりがユースケースや最新情報の不足であれば効果が見込めます。推進の工数不足や社内ルール未整備が原因の場合は、社外の場では解決しないため先に社内で決める必要があります。
- AI推進担当は専任にすべきですか。
-
専任化が難しくても、週あたりの推進工数を職務として明文化し、その分の既存業務を外す決定が必要です。兼務のまま追加業務として任せると、担当者の意欲が下がった時点で推進が止まります。
まとめ
AI推進担当者の孤立は実在しますが、公的調査が示す課題の上位は「具体的な活用場面が不明」35.6%と「導入を推進する人材がいない」32.0%であり、「支援先や相談相手を確保できない」は11.5%にとどまります(商工中金、2026年1月調査、有効回答3,892社)。中小機構調査でも、必要な公的支援として専門家の派遣や導入相談を挙げた企業は59.8%と5項目中最下位でした。
社外コミュニティは、ユースケースと最新情報の供給という上位課題の一部に効きます。一方で、推進工数の配分・社内ルールの決定・効果測定の合意は、経営側が決めない限り外では埋まりません。次の一歩は、コミュニティの検討ではなく、この3点のうち自社でまだ決まっていないものを特定することです。
自社のAI推進体制とユースケースの棚卸しから整理したいという方は、AI導入相談フォームからお気軽にご相談ください。現状の詰まりがどこにあるかの切り分けからお手伝いします。
出典・参考資料
- 商工中金: 中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査) ()
- 中小機構: 中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)調査結果のポイント ()
- アイスマイリー: “AI推進の孤立化”を解消する、生成AI実践コミュニティ「AIsmiley Community ()
- AIsmiley Community: 公式サービスサイト
- 帝国データバンク: 生成AIに関する企業の動向調査 ()
- ValuePress: “AI推進の孤立化”を解消する、生成AI実践コミュニティ「AIsmiley Community () (プレスリリース配信版)
- TWOSTONE&Sons: 企業のAI内製化に関する『限界』の実態調査 () (有効回答111名の民間調査。本文では参照せず参考掲載)



