DeepLがMCP対応|管理者が先に決める4項目

DeepLが2026年9月22日、MCP経由でMicrosoft Copilot・ChatGPT・Claudeから利用可能になりました。提供される28ツールの内訳、プラン別の機能差、管理者が先に決めるべき4項目を整理します。

チャットから翻訳機能と社内用語集につながる構成を象徴した図

DeepLは2026年9月22日、Model Context Protocol(MCP)経由でMicrosoft Copilot・ChatGPT・ClaudeからDeepLを直接利用できるようになったと公表しました。アシスタントを離れずにテキスト翻訳・文書翻訳ができ、自社の用語集やカスタムルールも適用できます。ただしDeepLが公開している開発者ドキュメントを読むと、提供されるツールは最大28個あり、そのうち20個は翻訳そのものではなく用語集・スタイルルールを読み書きするツールです。うち8個は上書き・削除を伴います。導入前に管理者が決めることを整理します。

何ができるようになったのか

DeepL MCPは、AIアシスタントのチャット画面からDeepLの翻訳・言い換え・用語集適用を呼び出せるようにする仕組みです。DeepLがサーバーをホストしているため、社内に何かをインストールする必要はありません。

DeepLの公式ブログが挙げる機能は3つです。

  1. テキストの翻訳:個々のメッセージやテキストのバッチを、1つまたは複数の言語に一度に翻訳する
  2. 文書の翻訳:表、見出し、画像を含む書式やレイアウトを維持したまま、ファイルを翻訳する
  3. 自社の言語書式の適用:DeepLの用語集やカスタムルールを使い、社内の用語や語調を統一する

DeepLは「DeepL MCPはDeepLがホストしているため、外部のソフトウェアをインストールしたり実行したりする必要はありません」と説明しています。接続はDeepLの開発者ドキュメントに記載されたエンドポイント `https://mcp.deepl.com/v1/mcp` に対して行い、認証はOAuth 2.1でDeepLアカウントにサインインする方式です。クライアントIDやシークレット、APIキーの管理は不要とされています。

Claude・ChatGPT・Microsoft Copilotの3つは各アプリのコネクタディレクトリにDeepLが掲載されており、そこから追加するのが最短です。ドキュメントは「これらのツールのチーム向け・エンタープライズ向けプランでは、管理者が先にDeepLを有効化する必要がある場合がある」としています。Cursor、VS Code、Copilot StudioなどリモートMCPサーバーに対応したクライアントでは、上記URLを直接登録して接続します。

データの扱いについて、DeepLは「リクエストはお客様の既存の DeepL 契約に基づいて処理され、DeepL に送信されたテキストが DeepL のモデルを訓練する際に使用されることは一切ありません」と明記しています。

プランで使える機能と上限が変わる

DeepL MCPはDeepL Freeでも使えますが、用語集・スタイルルールの適用はFreeでは利用できません。1リクエストあたりの文字数上限もFreeは5,000文字、座席ベースのプランは128,000文字と25倍以上の差があります。

対応プランは「DeepL Free および座席ベースのプラン(Individual、Team、Business、DeepL for Enterprise)」です。プラン別にできることは次のとおりです。

機能DeepL Free座席ベースのプラン
テキスト・文書・画像の翻訳可可
DeepL Writeによる言い換え・校正可可(プランにWriteが含まれる場合)
リクエストごとの文体・コンテキスト・カスタム指示の指定不可可
用語集・スタイルルールの適用不可可
用語集・スタイルルール・カスタム指示の作成と編集不可可(チームの権限による)

リクエストの上限は次のように分かれます。

上限DeepL Free座席ベースのプラン
1翻訳リクエストあたりの文字数5,000128,000
1言い換え・校正リクエストあたりの文字数2,000128,000
1リクエストあたりのテキスト数5050
1リクエストあたりのターゲット言語数1010
1リクエストあたりのカスタム指示該当なし10(各300文字)

ドキュメントは「サーバーは、あなたのプランと権限が許可するツールだけを表示する」としており、DeepL Freeでは用語集・スタイルルールのツール自体が見えません。無料で試したときの体験と、社内の用語統一を目的とした運用は別物になります。複数のターゲット言語へ同時に翻訳した場合、使用量としては言語ごとに別々の翻訳としてカウントされる点も、費用を見積もるうえで押さえておきたい仕様です。

プランによって使える機能と文字数上限が分かれることを示した図

28ツールのうち20は「翻訳」ではなく設定の読み書き

DeepL MCPサーバーが公開するツールは最大28個です。内訳を数えると、翻訳・文書に関わるのは8個で、残り20個は用語集とスタイルルールを読み書きするツールです。

DeepLはツールを3種類に分類しています。Read(データを返すだけ)、Write(コンテンツの作成や設定の変更)、Destructive(既存データの上書きまたは削除)です。ドキュメントのツール表を区分ごとに数えると次のようになります。

区分ツール数ReadWriteDestructive
翻訳・ライティング5230
文書3120
用語集10334
スタイルルール・カスタム指示10424
合計2810108

Destructiveに分類されているのは、用語集では「Remove Glossary Entries(エントリの削除)」「Replace Glossary Dictionary(辞書の全エントリ置換)」「Delete Glossary Dictionary(言語ペアの辞書削除)」「Delete Glossary(用語集の削除)」。スタイルルール側では「Update Style Rule Set」「Delete Style Rule Set」「Update Custom Instruction」「Delete Custom Instruction」です。

つまり、DeepL MCPを接続したAIアシスタントは、座席ベースのプランで相応の権限があれば、社内で整備した用語集を削除したり、辞書の中身を丸ごと置き換えたりできるということです。DeepLのドキュメントも「多くのクライアントは、アシスタントが用語集やスタイルルールを変更・削除する前に確認を求める」と記載しており、確認ダイアログは出るものの、承認するのはチャットを操作している現場の担当者です。

用語集は、翻訳の品質を社内で揃えるために時間をかけて整備する資産です。「翻訳できて便利」という理由で全社に開放する前に、誰がDeepLの編集権限を持っているかを確認する必要があります。DeepLは権限について「用語集やスタイルルールの作成・変更には、DeepLチーム内の対応する権限が必要」としているため、統制はDeepL側の権限設定で行うことになります。

生成AIの機能が既定で有効になるときに管理者が何を決めるべきかという論点は、ChatGPT for Wordが既定ONになった際の4つの決定や、Copilotの機能再編で先に決める3つの境界でも整理しています。

文書の中身はモデルのコンテキストを通らない

DeepL MCPの文書翻訳は、ファイルの実体をモデルに読ませない設計になっています。DeepLは「文書翻訳はファイルのバイト列を帯域外(out of band)で移動させるため、文書の内容がモデルのコンテキストウィンドウを通ることは決してない」と説明しています。

手順は3段階です。アシスタントが `upload-document` を呼ぶとアップロードセッションと短命のリンクが返り、ファイルをアップロードします。次に `get-document-status` で進捗を確認し、完了したら `download-document` で訳文ファイルを受け取ります。訳文のファイル名にはターゲット言語が入ります(例:`report DE.docx`)。1回のアップロードで最大10のターゲット言語に翻訳できます。

対応形式は .docx、.doc、.pptx、.ppt、.xlsx、.xls、.pdf、.htm、.html、.txt、.xlf、.xliff、.srt、.png、.jpg、.jpeg です。PNG・JPEGは最大3MBで、他の形式のサイズ上限はプランによります。

データの取り扱いについて、DeepLのドキュメントは次の4点を挙げています。

  • テキストのペイロードはリクエストを超えて保存されない
  • 文書翻訳セッションは帯域外のアップロード・ダウンロードを成立させるために短時間だけ保持され、その後削除される。ファイルのバイト列はDeepLへストリーミングされ、MCPサーバーには保存されない
  • 通信はすべてHTTPS/TLSで暗号化され、サーバーはDeepL自身のサービスとのみ通信する
  • OAuthトークンの失効に対応しており、クライアントがトークンを失効させるとアクセスは即座に終了する

AIサービスのデータ保持をどこまで契約で詰めるかという論点は、OpenAIがゼロデータ保持を拡大した際の適用条件の記事もあわせて参考になります。

管理者が先に決める4項目

DeepL MCPを社内で使うなら、接続する前に決めておくことが4つあります。いずれも現場の担当者では判断できず、DeepL側とAIアシスタント側の両方の管理権限が必要になる項目です。

1. 組織としてDeepLコネクタを有効にするか DeepLは「管理者は、組織のアクセス権をいつでも有効または無効にできます」としており、ドキュメントのFAQにも「チーム管理者は組織全体のAIコネクタアクセスを無効にできる」と記載されています。まず既定をオンにするのかオフにするのかを決めます。

2. 用語集・スタイルルールを誰が変更できるか 前述のとおり、28ツールのうち8つはDestructive(上書き・削除)です。DeepLチーム内の権限設定で、誰が用語集を編集できるかを先に確認します。閲覧と適用だけでよい利用者に編集権限が付いていないかが確認ポイントです。

3. スタイルプロファイルで訳文を統一するか 管理者がスタイルプロファイルを割り当てている場合、DeepLはそのプロファイルの用語集・スタイルルールを自動的に適用し、アシスタントが要求した指定を置き換えます。社内の訳語を確実に揃えたい場合はこちらが確実です。なお、スタイルプロファイルはMCPサーバー経由では作成も変更もできません。

4. ネットワークの許可設定 ファイアウォールやプロキシがある環境では `mcp.deepl.com` を許可する必要があります。MCPサーバー、OAuthサインイン、文書のアップロード・ダウンロードがすべてこのドメインで動くためです。加えてClaudeで文書翻訳を使う場合、Claudeはコード実行サンドボックスからファイルをアップロードするため、Claude Team・Enterpriseプランではオーナーが Organization settings > Capabilities で「Allow network egress」を有効にし、許可ドメインに `mcp.deepl.com` を追加する必要があります。設定しない場合はアップロード用のリンクが提示され、利用者が自分でアップロードする流れになります。

管理者が決める4項目を並べたチェックリスト図

多言語業務での使いどころ

DeepL MCPが効くのは、翻訳が単独の作業ではなく、調査や作文の途中に挟まる業務です。アシスタントの中で完結するため、コピー&ペーストでの行き来がなくなります。

  • 海外顧客からの問い合わせ対応:受信した英文メールをチャット内で日本語化し、返信案を作ってから社内用語集を効かせて英訳する、という一連の流れがアシスタント内で完結します。
  • 契約書・仕様書の確認:文書翻訳は書式やレイアウトを維持し、ファイルの中身がモデルのコンテキストを通りません。機微な文書を扱う際の判断材料になります。
  • 社内通達の多言語展開:1リクエストで最大10言語に翻訳できます。ただし使用量は言語ごとにカウントされるため、対象言語は必要な範囲に絞るのが現実的です。

よくある質問

DeepL MCPは無料プランでも使えますか。

DeepL Freeでも利用できます。ただし用語集・スタイルルールの適用はできず、1翻訳リクエストあたりの文字数上限は5,000文字です。座席ベースのプランでは128,000文字になります。

社内の用語集をAIアシスタントから使えますか。

座席ベースのプラン(Individual、Team、Business、DeepL for Enterprise)で利用できます。DeepL Freeでは用語集・スタイルルールのツール自体が表示されません。

AIアシスタントが社内の用語集を消してしまうことはありますか。

権限があれば削除ツールを呼び出せます。DeepLは削除・上書きを伴う8つのツールをDestructiveと分類し、多くのクライアントが実行前に確認を求めるとしています。DeepL側の編集権限を絞るのが確実です。

社内ネットワークで何を許可すればよいですか。

`mcp.deepl.com` を許可します。MCPサーバー、OAuthサインイン、文書のアップロードとダウンロードがすべてこのドメインで動きます。Claudeで文書翻訳を使う場合は、別途ネットワーク送信の許可設定が必要です。

まとめ

DeepLは2026年9月22日、MCP経由でMicrosoft Copilot・ChatGPT・ClaudeからDeepLを利用できるようにしました。DeepLがホストするサーバーに接続し、OAuthでサインインするだけで、テキスト翻訳・文書翻訳・自社用語集の適用がチャット内で完結します。送信したテキストがDeepLのモデルの訓練に使われることはないとDeepLは明記しています。

一方で、公開されるツールは最大28個あり、そのうち20個は用語集・スタイルルールの読み書きで、8個は上書き・削除を伴うDestructiveです。文字数上限や用語集の利用可否はプランで分かれ、Claudeでの文書翻訳にはネットワーク送信の許可設定が要ります。「便利そうだから各自つないでおいて」で始めると、整備した用語集の統制が先に外れます。

次のアクションとして、DeepLの管理画面で用語集の編集権限を持つメンバーを確認し、そのうえで組織としてコネクタを有効にするかを決めてください。訳語を全社で揃えたい場合は、スタイルプロファイルの割り当てまで含めて設計すると、現場ごとの指定に左右されなくなります。

社内の多言語業務をどこまでAIアシスタントに寄せるか、権限とネットワークの設計まで含めて整理したい方は、AI導入相談フォームからご相談ください。ツールの導入可否だけでなく、運用して破綻しない権限設計の観点でお話しします。

出典・参考資料

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