出力単価4割減でも請求は4割減らない|Fugu Max検算

Sakana AIが2026年9月11日に公開したFugu Maxは出力$6/100万トークン。Sonnet 5より4割安い出力単価ですが、請求額が4割減るわけではありません。AI運用コスト削減の効き方を公式価格で試算し、乗り換え前に測る3つの数字を示します。

出力単価の差が請求額に効く割合は入出力比率で変わることを示す図

Sakana AIが2026年9月11日に公開した「Fugu Max」は、出力$6/100万トークンという価格を打ち出しました。Claude Sonnet 5の出力$10と比べて4割安い水準です。ただし、この記事の結論を先に書くと、出力単価が4割下がっても請求額は4割減りません。入力単価は両者とも$2で同じだからです。減る金額を決めるのは自社の入力・出力トークン比率で、公式価格で試算すると削減率は13%から38%まで開きます。乗り換え判断の前に何を測るべきかを整理します。

Sakana AIが公開したFugu MaxとFugu Ultra v2

Sakana AIは2026年9月11日、「Introducing Fugu Max and Fugu Ultra v2: Orchestrating the Pareto Frontier」を公開し、2つのモデルを同日提供開始しました。どちらも単体のモデルではなく、複数のモデルを束ねて指揮する「オーケストレーション」構成です。

Fugu Maxは、オープンウェイトモデルと特化型モデルを同社として過去最大のプールでまとめ、タスクごとに「解ける中で最も軽いモデル」へ動的に振り分けます。NVIDIAとの協業でNemotronファミリーも組み込まれました。Fugu Ultra v2は逆に性能側へ振った構成で、Sakana AIは複雑な多段階タスク向けと位置づけています。

公式のSakana Fugu製品ページに掲載された価格は次のとおりです(2026年9月14日時点)。

モデル入力(100万トークン)出力(100万トークン)キャッシュ入力備考
Fugu Max$2$6$0.25コンテキスト長にかかわらず一律
Fugu Ultra v2.0$5$30$0.50コンテキスト272Kトークン超は$10/$45/$1.00

Fugu Maxではweb_searchとweb_fetchが1回あたり$0.007で別途課金されます。サブスクリプションはStandard $20/月、Pro $100/月(Standardの10倍の利用枠)、Max $200/月(同20倍)の3段階です。

性能面では、Fugu MaxがTerminal Bench 2.1、GPQAD、AA-LCR、GDP.pdf、AutomationBench、そして同社の内部ベンチマークSWEFishの6つで最高総合スコアを記録したとSakana AIは報告しています。ただし、これらはすべてSakana AI自身の測定値であり、第三者による検証は本記事の執筆時点で確認できていません。

「出力単価4割減」は請求額4割減ではない

AIの請求額は「入力トークン数×入力単価+出力トークン数×出力単価」で決まります。Fugu MaxとClaude Sonnet 5は入力単価がどちらも$2で同額のため、差がつくのは出力側だけです。したがって削減率は、自社のワークロードがどれだけ出力に寄っているかで決まります。

公式価格(Fugu Max $2/$6、Claude Sonnet 5 $2/$10)を使い、月間トークン量を仮定して試算すると次のようになります。

ワークロードの型月間トークン(入力/出力)Sonnet 5Fugu Max削減率
入力偏重(社内文書の検索・要約)2,000万/200万$60$5213.3%
バランス型(問い合わせ一次対応)1,000万/500万$70$5028.6%
出力偏重(コード生成・長文ドラフト)500万/1,500万$160$10037.5%

※トークン量は試算のための仮定値です。単価は各社の公式価格(2026年9月14日時点)を使用しています。

同じ出力単価4割減でも、入力偏重の使い方では請求額は13%しか下がりません。社内文書を大量に読ませて短く答えさせる用途ほど、出力単価の値下げは効かないということです。逆に、コード生成や提案書のドラフト作成のように出力が長い用途では4割近くまで効きます。

比較相手がGPT-5.6 Terra(入力$2/出力$12)の場合は出力単価の差がさらに開くため、バランス型で37.5%、出力偏重で47.4%の削減になります。Sakana AIが説明する「Sonnet 5・GPT 5.6 Terra・Kimi K3より出力価格が40〜60%低い」という記述は、両社の公式価格で検算しても成立します($6は$10に対して40%減、$12に対して50%減)。効き方が違うのは、単価ではなく使い方の側です。

オーケストレーション=常に安い、ではない

「複数モデルを束ねると安くなる」と一般化するのは誤りです。同日公開されたFugu Ultra v2は出力$30で、Claude Opus 5の出力$25より高い設定です。

モデル入力出力
Claude Opus 5$5$25
Fugu Ultra v2.0$5$30
Claude Fable 5$10$50

オーケストレーションという仕組みそのものが安さを生むのではなく、Fugu Maxが「安く済ませる」方向に最適化されているから安いという整理が正確です。同じ仕組みでも、性能側に最適化したFugu Ultra v2は上位モデルと同等以上の単価になります。AI運用コストの考え方は「ローカル実行AI」は安いのか|消えるのはトークン課金だけでも整理しています。

なお、Fugu Ultra v2はモデルプールにFable 5、Fable 5.1、GPT-6-Astraを含まずにこのスコアを出したとSakana AIは説明しています。特定ベンダーの最上位モデルに依存しない構成である点は、供給が止まったときの継続性という観点で意味があります。

価格以外に確認すべき3つの条件

単価だけで乗り換えを決めると、後から制約に当たります。公式ページに明記されている条件のうち、日本企業の導入判断に効くのは次の3点です。

Fugu導入前に確認する3条件を示す図
確認項目公式ページの記載経営判断への影響
モデルプールの除外可否Fugu UltraとFugu Maxはプール固定。除外できるのは無印Fuguのみ(コンソールの設定メニュー)「特定の国・ベンダーのモデルは使わせない」という社内方針がある場合、Fugu Maxは選べない
提供地域EU/EEA域内では現在利用不可(GDPR等への対応を進めているため)欧州拠点・欧州顧客のデータを扱う業務では使えない
API互換性OpenAI互換API。既存のクライアントをエンドポイントに向けるだけでSDK移行は不要乗り換えの技術コストは低い。ただし出力の癖は変わるため検証は必要

1つ目は見落としやすい点です。Sakana AIはFAQで、Fugu Ultraは性能を出すために全エージェントプールを使うためプールが固定、Fugu Maxもコストと性能の両方を最適化する必要があるためプールが固定、と明記しています。特定プロバイダーを除外したい場合は無印Fuguを使うか、エンタープライズ向けの個別対応を相談する形になります。

また、Sakana AIは新しいフロンティアモデルが一般公開されてから約2週間で更新版を提供する方針を示しています。これは裏を返すと、プールの中身が定期的に入れ替わるということです。出力の品質を固定したい業務では、モデル更新時の再検証を運用に組み込む必要があります。

乗り換え前に測る3つの数字

AI運用コスト削減の検討は、モデル比較表からではなく自社の請求内訳から始めます。測るのは次の3つです。

  1. 直近3か月の入力トークン数と出力トークン数:各社のコンソールやダッシュボードで月次の内訳を出す。出力が全体の何割かで、この記事の試算表のどの行に当てはまるかが決まります
  2. キャッシュ読み取りの割合:Claude Sonnet 5のキャッシュ読み取りは$0.20/100万トークン、Fugu Maxのキャッシュ入力は$0.25です。同じ文脈を繰り返し読ませる運用では、入力側でFugu Maxが割高になる可能性があります
  3. 用途別の内訳:コード生成、要約、問い合わせ対応のどれに何割使っているか。出力偏重の用途だけを切り出して乗り換えれば、全面移行より少ない検証で効果を取れます

この順で測ると、「どのモデルが安いか」ではなく「自社のどの用途を、どこへ移すと、いくら減るか」という問いに変わります。AI投資の効果測定でつまずく典型例はAI投資の55%が「効果不明」|ROIが見えない3つの落とし穴と対策にまとめています。

よくある質問

Fugu Maxに乗り換えると、AIの利用料はどれくらい下がりますか。

自社の入出力比率次第です。公式価格で試算すると、Claude Sonnet 5からの乗り換えで入力偏重の用途は約13%、出力偏重の用途は約38%の削減になります。

複数モデルを束ねるオーケストレーションは、単体モデルより必ず安いのですか。

いいえ。同日公開のFugu Ultra v2は出力$30で、Claude Opus 5の$25より高い設定です。安さは仕組みではなく、そのモデルが何に最適化されているかで決まります。

Fugu Maxで使われるモデルを自社で選べますか。

選べません。Sakana AIのFAQでは、Fugu MaxとFugu Ultraはモデルプールが固定と明記されています。プロバイダーを除外できるのは無印のFuguのみです。

まとめ

Sakana AIのFugu Maxは入力$2/出力$6で、Claude Sonnet 5に対して出力単価が4割安い水準です。ただし入力単価は同額のため、請求額の削減率は自社の入出力比率で13%から38%まで変わります。同日公開のFugu Ultra v2は出力$30とOpus 5より高く、オーケストレーション構成そのものが安さを意味するわけではありません。加えて、Fugu Maxはモデルプールを固定で使う前提であり、EU/EEA域内では現在利用できません。

次に取るべきアクションは3つです。第一に、直近3か月のAPI請求から入力・出力・キャッシュのトークン内訳を出すこと。第二に、出力偏重の用途を1つだけ切り出して並行検証すること。第三に、モデルプールの更新に合わせた再検証の手順を先に決めておくことです。

AIの利用料の内訳を分解して、どの用途をどこへ移すと効果が出るかを一緒に整理したいという方は、AI導入相談フォームからお気軽にご相談ください。

出典・参考資料

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