2026年8月20日、一般財団法人日本規格協会がAI関連のJIS規格2本を発行しました。JIS Q 42005:2026(AIシステム インパクトアセスメント)と、JIS Q 42006:2026(AIマネジメントシステムの審査及び認証を提供する機関に対する要求事項)です。ただし、企業が第三者認証を受ける対象の規格が増えたわけではありません。認証を受ける規格、審査する側を縛る規格、影響評価の手順を示す規格は別物です。本記事では3本の役割分担と、自社が今何を準備すべきかを整理します。
2026年8月20日に発行された2本のJIS
日本規格協会は2026年8月20日、AIマネジメントシステムに関連する2本のJISを制定・発行しました。いずれも国際規格に対応するJISです。
| 規格番号 | 正式名称 | 対応国際規格 | 頁数 | 価格(税込) |
|---|---|---|---|---|
| JIS Q 42005:2026 | 情報技術-人工知能(AI)-AIシステム インパクトアセスメント | ISO/IEC 42005:2025 | A4判46頁 | 9,460円 |
| JIS Q 42006:2026 | 情報技術-人工知能(AI)-AIマネジメントシステムの審査及び認証を提供する機関に対する要求事項 | ISO/IEC 42006:2025 | A4判36頁 | 9,020円 |
日本規格協会はプレスリリースで、JIS Q 42005を「AIシステム単体の影響評価を行うための具体的な手法」、JIS Q 42006を「審査・認証機関の公平性、技術的能力などの要求事項」と説明しています。
企業が認証を受けるのはJIS Q 42001、42006が縛るのは審査する側
AIマネジメントシステムの第三者認証で、企業が適合を示す規格はJIS Q 42001(ISO/IEC 42001)です。今回発行されたJIS Q 42006は、その認証を行う認証機関の側に課される要求事項であり、企業が取得する認証の名前ではありません。
制度は3層に分かれています。
| 層 | 誰が | 何に適合する必要があるか |
|---|---|---|
| 認定機関 | ISMS-AC(情報マネジメントシステム認定センター) | ISO/IEC 17011(認定機関への要求事項) |
| 認証機関 | SGSジャパン、テュフ ラインランド ジャパンなど | ISO/IEC 42006(JIS Q 42006)=審査する側への要求事項 |
| 認証を受ける組織 | 一般の事業会社 | ISO/IEC 42001(JIS Q 42001)=AIマネジメントシステムの要求事項 |
ISMS-ACのAIMS適合性評価制度でも、組織の認証に用いられる基準はISO/IEC 42001(JIS Q 42001)と示されています。したがって「JIS Q 42006の認証を取る」という準備は成り立ちません。自社が備えるべき規格はJIS Q 42001です。

JIS Q 42006が企業にとって意味を持つのは、間接的な形です。審査する側の公平性と技術的能力に要求事項が置かれることで、審査の質と、認証の通用性が担保されます。認証取得を検討する企業にとっては、「どの認証機関を選ぶか」を判断する際の背景知識にあたります。
AIガバナンスの認証としては、日本国内では別系統の制度も動いています。JDLA「C認証」開始|AIガバナンス認証で問われる4項目もあわせて確認すると、制度の全体像がつかみやすくなります。
JIS Q 42005が埋めるのは「影響評価をどう回すか」
JIS Q 42005は、AIシステム単体の影響評価(インパクトアセスメント)を実施するための指針です。日本規格協会は「組織は、JIS Q 42001とJIS Q 42005を併用することで、効果的なマネジメントシステムの構築が可能」と説明しています。
JIS Q 42001はマネジメントシステムの要求事項であり、影響評価を行うこと自体は位置づけられています。一方で、個々のAIシステムについて「いつ、どの範囲で、誰の責任で実施し、どう記録・承認・監視するか」という運用の型までは、要求事項の性質上そこまで踏み込みません。JIS Q 42005はその運用の型を扱う位置づけです。
実務的には、次のような場面で参照先になります。
- 社内のAI利用申請フォームに、影響評価の項目をどこまで入れるかを決めるとき
- 影響評価の承認者を誰にするか(部門長か、リスク管理部門か)を決めるとき
- 一度実施した影響評価を、どのタイミングで見直すかを決めるとき
日本のAI認証制度はすでに動いている
今回のJIS発行は、日本でのAIマネジメントシステム認証の開始ではありません。制度はすでに1年以上かけて立ち上がっており、認証機関の認定も始まっています。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年8月20日 | JIS Q 42001:2025(ISO/IEC 42001:2023対応)発行 |
| 2026年1月14日 | ISMS-ACが国内初のAIMS認証機関を認定(SGSジャパン、テュフ ラインランド ジャパンの2機関) |
| 2026年6月21日 | ISMS-ACがAPAC AIMS MRAの署名機関として承認(NABCB・インド、SAC・シンガポールに次ぐ3番目) |
| 2026年8月20日 | JIS Q 42005:2026、JIS Q 42006:2026 発行 |

APAC AIMS MRAへの署名は、日本で取得したAIMS認証の国際的な通用性に関わります。ISMS-ACは、この署名により自らの認定活動がISO/IEC 17011に適合し、署名した各国の認定機関と同等の信頼性を有することが認められた、と説明しています。海外取引先からAIガバナンスの証明を求められる企業にとっては、この点が実務上の価値になります。
なお、認定を受けたAIMS認証機関は2026年1月時点で2機関です。認証取得を計画する場合、審査枠の確保に時間がかかる可能性があります。
経営・DX担当者が今決める4項目
規格が出たからといって、全社ですぐ認証取得に動く必要はありません。まず決めるのは次の4点です。
| 決めること | 判断の目安 |
|---|---|
| 第三者認証を取りに行くか | 海外取引先・大企業からAIガバナンスの証明を求められているか。求められていないなら、まずJIS Q 42001を社内規程の設計図として使うだけでも足りる |
| 影響評価の様式を作るか | AIを顧客対応・採用・与信など人に影響する用途で使っているか。使っているならJIS Q 42005の参照価値は高い |
| 規格票を誰が読むか | 2本で計18,480円(税込)。情報システム部門かリスク管理部門か、読む担当を決めてから購入する |
| 取引先要請への回答方針 | 「認証は未取得だが、JIS Q 42001に沿った社内規程と影響評価の記録がある」と答えられる状態を先に作るか |
AI利用ルールの整備が業務にどう効くかは、AI利用ルールで業務量減39.7%|未整備との差17ポイントでも扱っています。
具体的な活用シーン
- 製造業で外観検査AIを使っている場合:誤判定が出荷品質に直結するため、JIS Q 42005の影響評価の型を使い、判定閾値の変更時に再評価するルールを決めておくと、顧客監査での説明がしやすくなります。
- 人材・採用領域でAIを使っている場合:応募者に影響が及ぶ用途であり、影響評価の記録が最も求められる領域です。承認者を人事部門長に固定しておくと運用が止まりません。
- 海外に販売子会社がある場合:APAC AIMS MRAの枠組みにより、日本で取得したAIMS認証が域内で通用する基盤ができています。認証取得の判断材料に加えられます。
この情報を扱うときの注意点
規格に関する情報は、時点と出典の粒度が結果を左右します。3点を押さえてください。
- JIS規格票の本文は有償です。本記事は日本規格協会のプレスリリースおよび公的機関の公表資料に基づいており、規格票の本文は参照していません。条項レベルの判断が必要な場合は、規格票を購入して確認してください。
- 「対応国際規格」と「一致」は別の話です。JIS Q 42006の対応国際規格がISO/IEC 42006:2025であることは公表されていますが、対応の程度(一致か修正か)は規格票の記載で確認する必要があります。
- 認定機関・認証機関の状況は時点で変わります。本記事の認証機関数は2026年1月時点、その他の記述は2026年8月28日時点の公開情報に基づきます。
よくある質問
- AIマネジメントシステムの認証は、どの規格に基づいて取得するのですか。
-
組織が適合を示すのはJIS Q 42001(ISO/IEC 42001)です。2026年8月20日発行のJIS Q 42006は認証機関に対する要求事項で、企業が取得する認証ではありません。
- JIS Q 42005の影響評価は、認証取得に必須ですか。
-
JIS Q 42005は指針であり、それ自体が認証の要求事項ではありません。日本規格協会はJIS Q 42001との併用を推奨しており、影響評価の運用手順を具体化する位置づけです。
- JIS規格票はどこで入手できますか。
-
日本規格協会のウェブサイトで購入します。JIS Q 42005:2026は9,460円(税込・A4判46頁)、JIS Q 42006:2026は9,020円(税込・A4判36頁)です。
まとめ
2026年8月20日に発行されたJIS Q 42005とJIS Q 42006は、AIマネジメントシステムの周辺を日本語の規格として整えるものです。企業が第三者認証で適合を示す規格はJIS Q 42001であり、この点は今回の発行で変わっていません。日本の認証制度は2026年1月の初認定、6月のAPAC AIMS MRA署名を経て、すでに実運用の段階にあります。
次に取るべきアクションは、認証取得の検討ではなく、確認です。自社がAIを使っている業務を一覧にし、「人に影響が及ぶ用途か」「影響評価の記録が残っているか」の2列を埋めてください。両方が該当する行があれば、そこがJIS Q 42005を参照する最初の対象になります。
AIガバナンスの社内規程づくりや、取引先からのAI関連の要請への対応方針を整理したいという方は、AI導入相談フォームからお気軽にご相談ください。
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出典・参考資料
- 一般財団法人日本規格協会: 安心・安全なAI社会の実現へ () (JIS Q 42005:2026・JIS Q 42006:2026 発行の公式発表)
- ISMS-AC(情報マネジメントシステム認定センター): AIマネジメントシステム(AIMS)適合性評価制度の概要
- JIPDEC: ISMS-ACが国内の認証機関に対して初のAIMS認定! ()
- ISMS-AC: ISMS-ACは、APAC AIMS MRAの署名機関となりました ()
- ISMS-AC: JIS Q 42001:2025発行のお知らせ ()
- 一般財団法人日本規格協会: 【注目JIS】人工知能(AI)マネジメントシステムについてのJISを発行しました(JIS Q 42001)



